特別展
正宗十哲―名刀匠正宗とその弟子たち―
2024年2月18日(日)~
3月27日(水)
お知らせNews
展覧会概要Overview
正宗は、鎌倉時代末期に相模国鎌倉で活動した刀工です。正宗の作品として伝わる刀の多くには銘がありません。しかし、よく鍛えられた力強い地鉄に、のたれを主調として、ときに大きく乱れ、沸が強く付いた刃文が、正宗の特徴として高く評価されています。それまでの日本刀制作地といえば、山城国、大和国、備前国が知られていましたが、正宗は、これらの産地とは一線を画す新たな作風、すなわち相州伝を完成させたのです。
正宗の出現以後、相州伝は諸国に伝播し、各地の刀工に大きな影響を及ぼすこととなります。なかでも、山城国の来国次と長谷部国重、美濃国の兼氏と金重、越中国の江義弘と則重、石見国の直綱、備前国の兼光と長義、筑前国の左文字の十人の作には、正宗からの影響を色濃く見て取れることから、彼らを「正宗十哲」と総称するようになりました。十哲の刀工たちは、必ずしも正宗と直接の師弟関係にはありませんが、鎌倉から遠く離れた地にも、正宗の作風が影響を与え、さらに次の世代の刀工にも受け継がれていった点に、この偉大なる刀匠が打ち立てた相州伝の真価を認めることができるでしょう。
正宗をテーマとした展覧会はこれまでにも開催されてきましたが、十哲たちを特集する内容は今回が初めてです。本展では、相州鍛冶の先人たちから、相州伝を確立した名刀匠正宗、そして正宗の作風を受け継いだ諸国の刀工へと続く、相州伝の系譜をたどります。
- 展覧会名
特別展「正宗十哲―名刀匠正宗とその弟子たち―」
- 会期
2024年2月18日(日)~3月27日(水)
- 休館日
月曜日
- 開館時間
9:30~17:00
- 観覧料
一般1,000円(800円)高校生以下無料
※( )内は前売りまたは有料20名以上の団体料金
- 会場
ふくやま美術館 1階企画展示室(広島県福山市西町二丁目4-3)
- 主催
(公財)ふくやま芸術文化財団 ふくやま美術館、福山市、日本経済新聞社
- 図録について
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構成Chapter
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正宗の先人たち
相模国における刀剣の歴史は、鎌倉時代中期頃に始まります。鎌倉幕府が、当時の刀剣の二大産地である山城国から粟田口国綱を、備前国から三郎国宗と一文字助真を呼び寄せたことにより、この地に相州鍛冶の礎が築かれることとなりました。
鎌倉に居住したことが確かな最初の刀工は、新藤五国光です。国綱の子ともいわれるとおり、謹直な直刃を焼くその作は、たしかに粟田口物を思わせます。しかし一方で、硬軟の鉄を織り交ぜた鍛えに、太い地景がめぐり、刃中に金筋が輝く作風はそれまでにないものであり、のちの正宗につながる新たな作風を切り拓いたことから、相州伝の祖と位置づけられてきました。
この国光の門下に育ったのが、行光や正宗です。行光は、刃中の働きが豊富な師風を受け継ぎつつ、さらに幅広い作域に取り組みました。それは、弟弟子にあたる正宗に至って、相州伝という独創的な作風として開花することになります。
第一章では、やがて名刀匠正宗を生むこととなる相州鍛冶の先人たちの作品を紹介します。-
国宝「太刀 銘 国宗」ふくやま美術館蔵(小松安弘コレクション)
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重要文化財「太刀 銘 助真」三井記念美術館蔵
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国宝「短刀 銘 国光(名物 会津新藤五)」ふくやま美術館蔵(小松安弘コレクション)
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相州伝の完成者―正宗出現―
新藤五国光に教えを受けた正宗は、師風を受け継ぎつつ、さらに明るく冴えた、躍動的な作風へと発展させました。その刃文は、のたれを基調として大小の互の目を交え、足・葉が豊かに入って変化に富んだものとなります。美しく並んだ沸の粒が刃中に舞い上がり、銀の砂を流したような砂流しがかかって、さらに地鉄の中で太い地景となって力強く輝くさまは、まるで刻々と移り変わる自然の景色のようで、多くの人の心を惹きつけてきました。
正宗の作品に対する評価は江戸時代にいっそう高まり、8代将軍徳川吉宗の命で編纂された『享保名物帳』においては、所載の名物刀剣168口のうち、実に41口を正宗の刀が占めています。一方で、銘のある作品がほとんどないことを根拠として、正宗という刀工の存在自体を否定する「正宗抹殺論」が唱えられたこともありました。しかしながら、この名刀匠の卓越した技量、唯一無二の品格は、正宗として伝えられる有銘無銘の作品たちが何よりも雄弁に物語っているでしょう。
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国宝「短刀 無銘 正宗(名物 九鬼正宗)」林原美術館蔵
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重要文化財「短刀 無銘 正宗(名物 伏見正宗)」個人蔵
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国宝「短刀 無銘 正宗(名物 庖丁正宗)」永青文庫蔵
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相州伝の波及―正宗十哲―
南北両朝が並び立つ動乱の時代に入り、人や武器が全国を行き交うなかで、鎌倉で作られた刀もまた、遠く離れた地へともたらされたのでしょう。のちに「正宗十哲」と総称される、相州伝の追随者が、各地で同時多発的に現れ始めたことは、正宗が与えた影響の大きさを示しています。
山城国の来国次は、鎌倉来とも称され、それまでの来派にはない強い沸出来の乱れ刃を焼きました。同じく山城国の長谷部国重は、新藤五国光が名乗ったとされる「長谷部」姓であることからも、相州伝とのつながりがうかがえます。また、兼氏は、大和出身で、のちに美濃へ移住します。はじめ大和伝を学んだとされますが、正宗の影響を多分に受けたと思われ、その作は正宗によく通じています。同国の金重や、石見国の直綱の、数少ない現存作に共通する顕著な地景や金筋、砂流しはやはり相州伝に由来するものでしょう。さらに、越中国の江義弘は、古来、十哲の一人に数えられてきただけに、沸付いた地鉄や刃中の豊かな働きはいかにも相州伝らしい出来を示しています。そして、備前伝を継承しながらも、のたれ調の刃文を創出した兼光や、筑前鍛冶に新風を吹き込んだ左文字の作風にも、相州伝からの学びの跡を見て取れることに疑いはありません。
一方で、越中国の則重は、新藤五国光門下の刀工であり、正宗からみれば兄弟子にあたります。また、備前国の長義は、相州伝を取り入れた「相伝備前」の刀工ですが、正宗との師弟関係があったとすれば年代的に齟齬が生じます。
つまり、十哲の全員が正宗に師事して直接教えを受けたかどうか、という点には、まだ研究の余地を多く残しています。しかし、たとえ間接的であったとしても、地域を越え、時代を越えて、多くの刀工たちに及ぼした影響は計り知れず、ここに名刀匠正宗の真価を認めることができるのです。
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国宝「脇指 銘 来国次」個人蔵
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重要刀剣「脇指 銘 長谷部国重」個人蔵
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重要文化財「短刀 銘 兼氏」刀剣博物館蔵
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重要刀剣「短刀 銘 金重」個人蔵
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重要文化財「刀 朱銘 義弘/本阿(花押)(名物 松井江)」佐野美術館蔵
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重要文化財「太刀 銘 則重」文化庁蔵
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特別重要刀剣「太刀 銘 直綱」個人蔵
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重要文化財「太刀 銘 備州長船兼光/延文三年二月日」ふくやま美術館蔵(小松安弘コレクション)
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重要美術品「刀 無銘 伝長義」個人蔵
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国宝「短刀 銘 左/筑州住(号 じゅらく(太閤左文字))」ふくやま美術館蔵(小松安弘コレクション)
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正系継承者―貞宗―
正宗が完成させた相州伝は、実子あるいは養子といわれる貞宗が受け継ぎました。貞宗の作における刃文は、浅いのたれに小互の目を交えたもので、正宗よりも穏やかですが、金筋などの刃中の働きが豊富な点は師風をよく継承しています。また、造込みは総体的に大振りで、幅の広い刀身に、時に表裏に刻まれた彫物はきわめて端正にして、正宗以上に種類も多様です。
貞宗の作として現存する作品は全て無銘の「極め物」ですが、正宗の作風を忠実に受け継ぎつつも、正宗とは明らかに異なるこの作者を、貞宗以外の誰にも比定することができません。それゆえに、逆説的ながら、貞宗の存在が認められてきたのです。また、正宗の直弟子とされるために、十哲の中には数えられていませんが、「宗」の字を継いでいることからみても、その実質的な継承者であったことは確かでしょう。
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重要文化財「脇指 朱銘 貞宗/本阿(花押)(名物 朱判貞宗)」ふくやま美術館蔵(小松安弘コレクション)
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重要文化財「短刀 無銘 伝貞宗(名物 太鼓鐘貞宗)」個人蔵(刀剣博物館寄託)
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関連イベントEvents
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記念講演会正宗の魅力について【終了しました】
日時:2024年3月2日(土)14:00~
講師:三上貞直(刀匠・広島県無形文化財保持者)・原田一敏(ふくやま美術館館長)
会場:ふくやま美術館1階ホール
定員:100名
※当日先着順、聴講無料
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ギャラリートーク「いっしょに見よう!正宗十哲の刀」〔刀剣鑑賞が初めての方向け〕【終了しました】
日時:2024年2月25日(日)14:00~
講師:月村紀乃(ふくやま美術館学芸員)
会場:ふくやま美術館1階企画展示室
※特別展観覧券が必要
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ギャラリートーク「もっと知りたい!正宗十哲の刀」〔刀剣鑑賞に慣れている方向け〕【終了しました】
日時:2024年3月16日(土)14:00~
講師:原田一敏(ふくやま美術館館長)
会場:ふくやま美術館1階企画展示室
※特別展観覧券が必要
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体験イベント日本刀を持ってみよう!【終了しました】
本物の刀を手に取って、鑑賞や取り扱いの方法を体験します。
日時:2024年3月3日(日)
①9:30~10:00 ②10:30~11:00
③11:30~12:00 ④13:00~13:30
⑤14:00~14:30 ⑥15:00~15:30
⑦16:00~16:30
※当初の開催時刻を若干変更しております。何とぞご理解くださいますようお願い申しあげます。
会場:ふくやま美術館1階ホール
定員:各回10名 ※応募者多数の場合抽選、ただし時間帯の指定はできません。
対象:高校生以上
参加費:無料
応募方法:往復はがきまたは市HP電子申請システムに「イベント名」「郵便番号・住所」「名前」「電話番号」を記入し、ご応募ください。
※1通につき1名
募集締切:2月18日(日)必着
応募先:〒720-0067 広島県福山市西町二丁目4番3号 ふくやま美術館「日本刀を持ってみよう!」係
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映画上映会ドキュメンタリー映画「日本刀の美」【終了しました】
日時:2024年3月9日(土)、3月10日(日)
①9:45~11:00
②11:15~12:30
③13:30~14:45
④15:00~16:15(上映時間75分)
※当初の開催時刻を若干変更しております。何とぞご理解くださいますようお願い申しあげます。
会場:ふくやま美術館1階ホール
定員:各回100名(当日先着順)
入場料:500円
※ただし当日の特別展観覧券をお持ちの方は無料
詳細はこちらの
チラシをチェック!
アクセスAccess
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ふくやま美術館について
〒720-0067 広島県福山市西町二丁目4番3号
TEL:084-932-2345/FAX:084-932-2347
開館時間 9:30~17:00/休館日 月曜日(祝休日の場合は翌日) -
交通アクセス
● JR福山駅 福山城口(北口)から西へ約400m
● 山陽自動車道 福山東ICから西へ車で約20分 -
駐車場・駐車料金
本館南側に隣接の市営駐車場あり(有料)
※バイクの方は駐輪場をご利用ください。
※ふくやま文学館南側駐車場も利用可(有料)- ● 8:00~22:00
- 1時間までの30分毎に150円(1時間を超える30分ごとに100円)
- ● 22:00~翌朝8:00
- 1時間までごとに100円
- ● 有料展覧会をご観覧の場合は1時間無料
- 受付に駐車券をご提示ください
特別展
正宗十哲―名刀匠正宗とその弟子たち―
2024年2月18日(日)~
3月27日(水)